東野圭吾 原著
安倍照雄 脚本
清水友佳子 脚本
ラストシーンは胸に詰まる
小説を映画化する場合、設定を変えるとほとんど失敗することが多いが、この映画は
主人公の役柄が原作の「音楽」から「お笑い」に変わったところで、逆に成功した。
ラストの漫才シーン、山田孝之・玉山鉄二の演技には本当に胸に詰まるものがある。
この場面、私も大好きな小田和正の「言葉にできない」が流れる。映画を見た時には、
敢えていらないのではと思った。歌詞が強すぎて漫才にかぶると反って邪魔になる。
しかし後から「あなたに会えて本当に良かった。嬉しくて嬉しくて言葉に出来ない」
という歌詞は、兄の気持ちなのだと解った。ここまで計算した脚本なら大したものだ。
沢尻エリカもとてもいい。ただ関西弁が・・(皆が書いているからこれ以上書くまい)
誰も書いてないことをひとつ。
協賛した企業が、場面に登場することは時としてリスクが伴う。本作品はK'sデンキ。
主人公を、兄の理由で左遷したときは、レピュテーションリスクを背負ってしまった。
その後、会長役の杉浦直樹が良かったのでそれを持ち直した。面白い例である。
凄く感動したんだけど、欲を言えば
原作も泣きましたが映画でも泣きました。この映画は本当に深いです。
主軸の3人の役者さんの演技が光りました。
被害者、被害者、またその家族や友人、恋人、上司、色々な人の心理が見えます。
恋人とその家族にとってみれば、もし弟と結婚すれば犯罪者の身内になってしまうし、
誰にとってみても、犯罪者が身近になれば、決して人ごとは済まなくなる。
誰も悪意なんてないんです、だけど出来るだけ遠ざけたいと思うのが人の心理だと思います。
兄は刑期が終われば罪を償ったことになるはずだけれど、世間というのはそれでもなお許さず、
偏見は死ぬまでついて回るのではないでしょうか?
どんなに忘れたくても被害者は残りの人生を永久に奪われたのですから。
罪を犯した人に課せられた罪はそれほど大いものなのです。
でも、それでも必死に、前を向いて生きようとする人達の姿に、強さに、涙が出ました。
そういう世間の色々な差別や偏見をなくすことが出来るのも自分自身の生き様次第なんだと教えてくれます。
罪を償うとは、罪を本当の意味で悔いて改めることなんでしょう。
ところで時間枠の関係とはいえ、原作との違いで少し残念に思うところがありました。
1つめは、兄があまりに簡単に盗みを犯した様に見える点です。原作では兄と両親との関係、その裏の葛藤、
弟の進学への固執なども描かれています。また運送の仕事の際に仏壇にお金がある事も知っていたが故に
魔が差した犯行だった点も重要だったんじゃないかと思います。
あれでは本当に強盗殺人と言われても仕方がないし、あまりに浅はか過ぎます。
2つめは、会長とのやり取りの部分。原作では会長とは二度面談します。
一度目は会長から忠告を受けます。主人公は差別と偏見に対して猛烈に怒りを感じます。
二度目に初めて、会長から手紙の件を告白され、受け入れるのです。
確かに良いシーンでしたが少しインパクトが弱かったかなぁと感じました。
差別と向き合う
加害者の家族は『犯罪者の家族』と言うレッテルを貼られ、仕事・生活・恋愛・家庭etc…において社会的差別を受けます。
その差別を『受け入れる』までの葛藤を、上手に表現していました。
差別を受け入れるのは容易ではありませんが、懸命に立ち向かって行く、沢尻エリカの言動に胸を打たれました。
最後の刑務所でのシーンはホントに言葉にできないです。
差別が世の中に充満している今、たくさんの方に見ていただきたいと思いました。
なぜ、涙が出てしまったんだろう
東野圭吾の作品は、映像化された方が面白いものが多いような気がする。「白夜行」もそうであったが、この「手紙」が特にそう。原作を読んだ時は、正直、特に何も感じなかったが、映画を見たら、泣いてしまった。泣こうなんて思って見たわけじゃない。涙が出てきてしまったのだ。
これは間違いなく、玉山鉄二の演技力のたまものだと思う。玉山鉄二自身が直接セリフを言うシーンは確かなかった。黙々と刑務所で過ごす姿と手紙を朗読する声だけ。しかし、それが、山田孝之が演じる弟の翻弄される人生とあいまって、最後のあのシーンに結びつく。あのワンシーンのために、今までのシーンがあったと言っても過言ではないだろう。個人的に好きではないが、小田和正の歌との相乗効果で、最後のあのシーンでは、溢れ出る涙をおさえることができなかった。
でも自分でも思った。この涙は、一体、何に対して流された涙なのかと。悲しみでもない。辛さでもない。感動でもない。小田和正の歌詞を借りてしまえば、この作品を見終わった後の気持ちは、まさに「言葉にできない」のである。
玉山鉄二の、山田孝之の、沢尻エリカそれぞれの思いが痛いほど伝わってくる。
作者には申し訳ないが、原作本は読まなくてもいいと思う。でも、この「手紙」という映画は、ぜひ多くの人に見て欲しい。
興味本位でない描写にとても好感がもてる作品
今回の作品そして百夜行もそうであるが、ともすれば興味本位に描かれてしまい歪んだ形で世間に出てしまうであろうテーマを、
原作者である東野圭吾氏はいつも丁寧に描いている。
その丁寧さが、今回の映画には感じられる。
俳優の方の演技、演出、構成など、どの部分をとっても、原作をとても大切にされているのが伝わってくる。
犯罪を犯してしまった兄、犯罪者の兄をもつ弟、その弟を見守る女性(妻)・親友、そして母を殺された息子。
その人が登場する、その場面での心情に、まったく違和感がないほど感情移入ができる。
だから、その一言に涙してしまう。映像の中の人物と一緒に・・・・・
「この映画を観ることができてよかった」心からそう思う作品に出会えた。
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